ささやきの回廊波を見る

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一般の方向けの研究案内:パチャパチャ蛙、キーキーこうもり、トントンきつつき結晶の波紋を見るのページもご覧ください。  

100年前、レイリー卿は、セント・ポール大聖堂のドームの壁の周りの空気を伝わっていく音響的なささやきの回廊波(ウィスパリングギャラリー波)を発見しました。壁の近くでささやくと、音波が壁に沿って回廊を伝わっていきます。


セント・ポール大聖堂でのささやきの回廊波の計算結果。左図:55Hzの音波です。赤色と青色はそれぞれ音圧の高低を、グリッド線の分布は空気の粒子の変位を示しています。右図:53 Hzの音波をグリッド線だけで示しています。それぞれの粒子の動きは楕円状の軌跡を描きます。数値mは円周に沿った波の数を、数値nは(中心を除く)半径方向の節の数を示しています。

セント・ポール大聖堂の回廊と同じ直径(33.7 m)の空気が入った円柱でのささやきの回廊波の計算結果です。音波は一方向に回って伝わっていきます。あるピッチ(音の高さ)での、伝わり方のパターンを我々はモードと呼んでいます。

私たちは、弾性表面波イメージングの方法を使ってささやき回路波として動いている音波が円板の縁に束縛されている様子を可視化しました。

左:ゴール・グンバズの断面図。右:試料の光学顕微鏡像

左:ゴール・グンバズ(有名なささやきの回廊があります)の断面図。右:試料(ミクロな銅の円板)の光学顕微鏡像。

可視化するために、直径40 μm(1 μm=10-6 m)のシリコン結晶の上のシリカの層に埋め込まれている銅の円板を使いました。私たちは銅の円板の縁の近くの点に弾性表面波を励起し、画像を作るために検出光パルスを試料上で走査しました。


ミクロな銅の円板上の弾性表面波。画像領域60 μm×60 μm。

すべての弾性波のうちからささやき回路波のみを取り出すために、新しいレーザー強度を変調する方法を使っています。次の図では、波を見せるデーター処理をしています。


銅の円板上の760 MHzのささやき回路波: 定在波となっています。

弾性波は円板の周りを両方の回転方向で進み、その重ね合わせによって振動は現れたり消えたりします。下図は、ささやき回路波の振幅像のある瞬間を3次元的に見せたものです。

ささやき回路波の3次元表示

私たちはこの波の寿命を約0.25 μs、この弾性波が明らかに減衰するまでに約7回周囲を回ると見積もることができました。セント・ポール大聖堂ではさらに音は4倍も周ります。

さらに、ささやきの回廊波が、周の付近にわざと亀裂をあけた銅の円板の周りを伝わる様子も可視化しました。時計の5時の方向にある亀裂から2次的な波紋がでていることが観察できます。


亀裂入りの直径175 μmの銅の円板上での波紋。クリックすると時間領域のアニメーションが始まります(2200 kBの動画です)。

次のステップとして、2つの円板や円板の列の間で行ったり来たりする波やカオス的キャビティ、フォノニック結晶共振器など、より複雑な形状に閉じ込められた波を観察することを考えています。 詳しくは、 'Gallery of whispers,' Physics World, vol. 25, Feb. 2012, p. 31 や、'Acoustic whispering-gallery modes generated and dynamically imaged using ultrashort light pulses,' T. Tachizaki, O. Matsuda, A. A. Maznev and O. B. Wright, Phys. Rev. B 81, 165434, 2010をご覧ください。

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