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タイや日本の共同研究者と一緒に、私たちは単一の動物細胞を3次元で、ピコ秒超音波法を使ってイメージングしました。
私たちは、2つの種類の細胞を使いました。牛の大動脈の内皮細胞と、マウスの脂肪細胞です。内皮細胞は血管の生理機能で重要な役割を果たしており、生物力学の研究に有用です。脂肪細胞は形状が異なるので、興味深い比較となります。
脂肪細胞と内皮細胞に対して、それぞれ微分干渉顕微鏡像と位相差顕微鏡像を重ねた蛍光顕微鏡像です。格は青色に染色されいます。右図は、1 μmの横分解能と100 nmの深さ分解能の単一の内皮細胞のピコ秒超音波像です。濃い青色が小さな超音波振幅に対応しています。
細胞は生体外でサファイア基板上のチタン薄膜に載せられており、そこに細胞内を通り抜ける高周波数の超音波パルスを励起してイメージングするために、超短パルスレーザー光を集光してました。超音波が通り抜ける際の振幅の動画によって、細胞内で超音波がより減衰することを可視化しました。
10 GHzの超音波がおよそ0.7ミクロンの厚みの細胞組織を通り抜ける動画です。この動画は測定で得られた光反射率変化のデータをウェーブレット変換することで得ました。濃い青色が振幅の小さい部分に対応しています。
これらの動画から弾性率や超音波減衰などの細胞の平均的な物理性質を深さ毎に導きました。
このピコ秒超音波による単一細胞の初めての3次元イメージを発展させると、将来的には生体外の細胞の内部構造を細胞を傷つけることなく100 nmの深さ分解能で観察することが可能になるでしょう。より詳しくは、 'Three-dimensional imaging of biological cells with picosecond ultrasonics,' S. Danworaphong et al., Appl. Phys. Lett. 106, 163701 (2015)をご覧ください。