ピコ秒超音波パルスは、空間幅が通常0.1 μm未満と極めて短く、可視光の波長よりも小さいという特徴を持ちます。このようなパルスは光を反射するため、半透明鏡として機能します。これにより、反射光(プローブ光)の変調を解析することで、超音波パルスの伝播を追跡可能です。
この変調周波数から音速を算出できます。私たちはこの手法を応用し、動物細胞の3次元イメージングにも成功しています。詳細はピコ秒超音波による動物細胞の3次元イメージングをご参照ください。
今、この実験手法の検出系に対し、2つの重要な改良を施しました。
第一の改良点は、高開口数対物レンズを用いて試料への光入射角を連続的に変化させることで、広帯域の超音波周波数成分を捕捉可能にしたことです。詳細は以下の論文をご覧ください: 「Time-domain Brillouin imaging of sound velocity and refractive index using automated angle scanning」 M. Tomoda、A. Kubota、O. Matsuda、Y. Sugawara、O. B. Wright, Photoacoustics 31, 100486 (2023)。
角度スキャン法の概略図(左)および対物レンズ上のプローブ光位置(角度対応)と遅延時間に対する反射率変化(右)
第二の改良点は、音速変化を屈折率の独立測定なしで直接モニタリング可能な新規構成の開発です。詳細は以下の論文で報告しています: 「Sound velocity mapping from GHz Brillouin oscillations in transparent materials by optical incidence from the side of the sample」 M. Tomoda、A. Toda、O. Matsuda、V. E. Gusev、O. B. Wright, Photoacoustics 30, 100459 (2023)。
試料側面入射法の概略図(左)と測定反射率変化(右)