ピコ秒超音波トモグラフィ

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ピコ秒超音波パルスはその空間幅がとてもに小さく、典型的には0.1 μm以下です。このため、現在までその伝播している波形を計測することはできませんでした。我々は透明な固体中を伝播するピコ秒超音波パルスを記録するトモグラフィ(断層撮影)技術を発表します。

我々は直径10 mmの半球形をし、平らな面には金薄膜を貼ったガラスを試料として使います。青色のレーザーパルスで金薄膜中に励起されたピコ秒超音波パルスは、ガラスへと伝播します。そのガラス中を伝播するピコ秒超音波パルスを近赤外のレーザーパルスで計測します。下図をご覧ください。

ピコ秒超音波トモグラフィのための実験装置図

半球試料を回転しながら異なった入射角での測定を繰り返して集めたデータセットを、コンピューターアルゴリズムで解析します。これによりガラス中を移動する超音波パルスの形状が出力されます。下のアニメーションをご覧ください。

ガラス中を伝播するピコ秒超音波パルスのアニメーション(300 kB)です。クリックしてください。

この超音波パルスの周波数は10 GHz程度です。じっくり観ると、このアニメーションの後半で、小さな2番目の超音波パルスを見つけることができるでしょう。これは、金膜で発生した後、ガラスとの界面で一度反射し、また金膜の表面で反射してガラスへ伝播してきた超音波のエコー(山びこ)です。

私達はまた、ノイズ等が一切ない理想的な状況での実験に対応する理論的なモデルによるアニメーションも作りました。

人工的に作り出したデータを元にしたトモグラフィ法で作り出されたピコ秒超音波パルス(赤い曲線)を、画像をクリックしてご覧ください。黒い曲線はデータを作り出す元にした歪みパルスの形状です。

この方法は、ピコ秒超音波の形状が伝播中にどのように変化するかを理解するのに役に立つでしょう。最終的には、さらに波長の短い光を使って、さらに短い超音波パルスを計測できるようになることを望んでいます。さらに詳しくは、'Tomographic reconstruction of picosecond acoustic strain propagation,' M. Tomoda, O. Matsuda, O. B. Wright and R. Li Voti, Appl. Phys. Lett. 90, 041114 (2007)をご覧ください。

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