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このゴブレット(足つきグラス)のような金属構造は光を閉じ込めることができます。このゴブレットの表面はとてもなめらかなので、光が内部でぐるぐると回って、電磁波モードをつくることを想像するのは難しくないでしょう。
クリックすると動画が見れます。(90 MBの英語の説明の動画です。クリックで見れない場合は、一度ファイルに保存して別のムービープレイヤーを試してください。)
この研究の目的は振動するゴブレットの中の光を変調することです。
もしゴブレットが1ミクロン以下の半径をもつくらいとても小さければ、この電磁波モードは「プラズモン」、より専門的にはドイツの科学者Gustav Mieの名前をとって「Mieプラズモン」と呼ばれます。
我々の試料は、極小な金のゴブレットが最密配列して、プラズモニック結晶を構成しているものです。試料の一部分のイメージを電子顕微鏡像と一緒に下図にに示します。それぞれのゴブレットが上部分が切り取られたナノボイド(ナノ空洞)となっています。それぞれのゴブレットは少しずつ重なっており、境界部分に三角形の形状の柱を形成しています。
試料:金のナノボイド(ナノ空洞)配列と、その電子顕微鏡像。
実験では、赤色のレーザー光パルスが小さな1ミクロン以下のスポットで熱して微小な振動を作ります。我々の試料は実はフォノニック結晶にもなっています。青色の光パルスが同じ位置で、その振動を強度変化を通して検出します。これらは、1 GHz(109周期/秒)あたりのとても高いピッチの振動です。試料の位置を走査して、レーザーパルスのあたるタイミングを変えながら動画として測定します。
6ミクロン四方の領域を測定した例を示します。
6ミクロン四方の領域の反射率変化イメージ。クリックしてください。アニメーションが始まります(2.8 MBの動画です)。
振動で構造が屈曲変形することで、反射光の強度が変動します。
測定データを処理することで振動周波数を一つずつ分離します。以下にナノボイドの中心が3つの異なった共振周波数で振動するのを示します。
1つのナノボイドの周りの振動の周波数フィルタイメージ。クリックしてください。アニメーションが始まります(620 kBの動画です)。
これらのデータを理解するために、ナノボイドの中心部分を励起したときの音響シミュレーションを見てください。
1.05 GHzで振動しているナノボイドの断面図。クリックしてください。アニメーションが始まります(130 kBの動画です)。
金のゴブレットが開いたり閉じたりしているようです。
振動しているゴブレット。
この呼吸しているような動きはナノボイドのプラズモニック共鳴を変化させ、ボイドの中心からの検出信号の変化を増強します。
これによりプラズモニック‐フォノニック結晶の振動分布を調査できます。これが長たらしい言葉だと思うのでしたら、「プラズフォニック結晶」と言ってもよいでしょう。
このプラズフォニック結晶のプラズモニックとフォノニックの両方の性質を光機械結合を増強するようにうまく処理できれば、高周波の音響光学変調器のような新しいデバイスへの可能性が開けるでしょう。 より詳しくは 'Mapping gigahertz vibrations in a plasmonic-phononic crystal,' T. A. Kelf et al., New J. Phys. 15, 023013, 2013.をご覧ください。