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フランス、オーストリアおよび日本国内の共同研究者と一緒に、我々はとても高い周波数の超音波パルスが直径1ミクロン以下の細いガラスファイバーを横切る様子を負っていく研究をしました。ナノ物質を高周波数の超音波で見ることは、光より短い波長を使うことになるので波長光で見るより高い空間分解能でイメージングすることを可能にします。3次元のサブミクロンサイズの対象物(今の場合はガラスファイバー)内を高周波数の超音波パルスが通り抜ける様子を連続的に追っていけるようになったことは、この高空間分解能のイメージングを追い求めていく一つの重要なステップを成し遂げたことになります。
我々は、最初に石英ガラスでできた光ファイバーを熱して引っ張って、非常に細いファイバーを作りました。そのファイバーに薄いアルミニウム薄膜を被せ、超短光パルスを使って横から超音波パルスを発生させました。
高周波の超音波パルスは光を使って細いファイバーの片側に励起され、ファイバーの中を超音波パルスが往復する様子をプローブ光パルスによって観察されます。
超音波パルスはファイバーの表面で励起された後、ファイバーの中心にわずか100nm幅で集まり、その後広がっていき、反対側の表面に当たって反射し、また中心に向かって進んでいきます。ガラスの中まで届くプローブ光パルスを使って、この超音波がガラス内を往復するプロセスを観測します。
実験で用いた半径400nmの石英ガラスファイバー中での、波長800nmの赤外光(左図)および波長136nmの超音波(右図)のシミュレーション結果。この実験は、薄膜やナノ物質をピコ秒以下のパルス幅の光で検査する方法であるピコ秒超音波法の発展させたものです。
将来的には、この技術をCT(計算機トモグラフィー)の方法と融合させることで、現在人体の内部を観察している医療用超音波スキャンと同じような原理で、透明や不透明なナノスケールの物質のイメージを100nmより優れた空間分解能で得ることができるようになるでしょう。
より詳しくは、 'Optical tracking of picosecond coherent phonon pulse focusing inside a sub-micron object,' T. Dehoux et al., Light Sci. Appl. 5, 16082 (2016)をご覧ください。