水銀中のピコ秒超音波法

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こちらもご覧ください。一般向けの研究案内:パチャパチャ蛙、キーキーこうもり、トントンきつつき超短光パルスによるピコ秒超音波法

液体中の超音波は、超音波の透過率とその液体が圧縮されたときに戻ろうとする割合(液体中の微視的な秩序性に関係しています)が密接に関わっている点で興味深い現象です。十分に高い周波数では超音波の通過の際に原子がそれぞれの位置で固まったようになり、硬く感じられます。この現象は構造緩和として知られています。

液体状態の水銀は構造緩和のために音速が周波数によって大きく変わることが知られており、特に興味深い物質です。縦波の音速がTHz周波数(〜1012 Hz)になると50%も上昇します。しかし、低周波数の音速(1 GHz=109 Hzで1450 m/s)から高周波数の音速にどのよう上昇していくかについては全く知られていません。

私たちは、ピコ秒超音波法ピコ秒超音波法を用いて、水銀中の超音波を10 GHzまで観測しました。実験は、2枚のサファイア板に挟んだ水銀の薄膜中に超音波パルスを光学的に励起して行いました。('Optical excitation and detection of picosecond acoustic pulses in liquid mercury,' O. B. Wright, B. Perrin, O. Matsuda and V. E. Gusev, Phys. Rev. B 78, 024303, 2008.)

Hg apparatus

実験図。水銀膜の厚みは1ミクロン。

ひずみパルスは光励起された後、以下のアニメーション(例として水銀の厚みが200 nmの場合)のように水銀膜の中を往復します。

クリックするとアニメーションが始まります。(400 kBの動画です。)

ひずみパルスは励起された位置に戻ってくると、サファイア基板との境界面を変位させ水銀の屈折率を変化させます。その変化を別の超短光パルスで検出します。

Hg echoes

1つめのエコーと2つめのエコーの結果。挿入図は1つめのエコーの振幅の周波数スペクトルを示す。

1つめと2つめのエコーの形を比較すると、構造緩和の証である音速と超音波減衰の周波数依存性を得ることができます。

水銀をより薄く挟むことで、この測定をより高い周波数まで拡張することができるようになります。

Liquid metal man

将来もしかしたら、映画「ターミネーター2」に出てくる液体金属のターミネーターのようなものの動力学をより理解することができるかもしれません。

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