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固体間の機械的な接触は、ナノスケールのミクロな表面荒さの細かさに依存し、接触領域の物理的な理解は工学や生物学で必須です。
接触力学を超高速光技術によって再検討することで、我々は接触界面を超高周波数の音波と熱波を使って調査する方法を発表します。
直径数ミリメートルのセラミック球を、サファイア基板に蒸着した厚み100 nmのクロム薄膜に押しつけました。クロム薄膜の裏側の面に集光された超短レーザーパルスが吸収されることで、薄膜は非常に急速に加熱され熱膨張し、音波と熱波を発生させます。装置の図を示します。
この音波と熱波は、右図のように2つの物質表面間のナノスケールの架橋が入り組んだ接触界面に到達します。そこで、これらの波は部分的に反射し、薄膜の裏側の面に戻ってきます。
この裏側の面での音響波と熱波の反射波の大きさを2ミクロンのスポットの検出光パルスでマッピングすると、接触物質間のナノスケールの架橋の様子を見ることができます。
上の図(時間28 ps)のように、接触領域で超音波エコーの大きさが明らかに小さくなることを発見しました。この減少量は超音波の反射の単純な理論で予想されるものよりも大きいです。またエコーの形状は接触領域で変化します(エコーを拡大した挿図をご覧ください)。これらの現象はナノスケールの架橋の振動によって起るものであると我々は考えています。
接触領域ではエコーは非接触領域よりも早く戻ってきます。これは、薄膜のナノメートルサイズでの変形によるものです。
ここに示した異なった加重に対する高周波数の熱波イメージは、温度上昇が小さい(青色の)接触領域では薄膜からの熱の逃げが大きいことを示しています。我々は接触領域近くで熱の流れが増すことを検出しました(緑色の同心円)。
この研究は、摩擦、潤滑、電気伝導・熱伝導の調べる方法として工学での応用や、結合を調べる方法としての生物学での応用をもたらすでしょう。
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より詳しいことは、論文'Nanoscale mechanical contacts probed with ultrashort acoustic and thermal waves,' T. Dehoux, O. B. Wright, R. Li Voti, and V. E. Gusev, Phys. Rev. B 80, 235409, 2009 をご覧ください。