フォノンダイオードとは何か?

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電子部品のダイオードは、非線形的に振る舞う物質の性質を利用して電流を一方向にしか流しません。光学分野でも、似たようなものとして、ファラデーアイソレーターと呼ばれる磁性結晶に基づき光を一方光にしか通さない光ダイオードがあります。

では、音についてはどうでしょう?

固体の表面上に三角形の穴が方向を揃えて一列に並んでいる状況を考えてください。その列に直角な一方向から弾性表面波を送ります。入射の方向によって波が三角形にぶつかる様子は異なります。私たちはそのような実験を、これから説明するような小さな三角形を使って行いました。


弾性表面波が非対称な構造に当たります。クリックするとアニメーションが始まります(1.4 MBの動画です)。

ある周波数成分を解析すると、頂点方向から入射する波は構造部分をより通り抜けることがわかりました。

このような非対称な構造を通り抜ける「非対称的な」透過は、明らかなことと言えます。 二つのさらなる例を下図に示します。一つ目の例は、レンズと、その焦点距離に置かれた小さな穴があいたミラーです。左から来る平行な光線はこのデバイスを通り抜けることができますが、右からくる平行な光線はほとんどが反射されてしまいます。二つ目の例は、内部全反射に関するものです。p偏光の光がブリュースター角で外側から界面に入ると100%透過しますが、反対側からの光は全反射のために100%反射します。

「一方向の」透過を示す非対称な構造の例。(a)レンズの焦点距離に置かれた穴の空いた鏡。(b)内部全反射。

次に三つ目として、おそらくもっとなじみのあるメガホンの例です。

メガホンは一方向の透過用にデザインされています。もし逆さまにして反対方向から話すと、あなたのしゃべったことがよく聞こえません。

このような線形的な非対称構造を「ダイオード」と呼んでもいいのでしょうか? 答えはNoです。もし内部全反射の例で、屈折した光線を反対にすると、その光線は界面を100%通り抜けます。同じことが三角形構造(これも線形構造です)にも言えます。もし、ただ波の入射の方向を入れ替えるだけでなく、三角形で散乱されたすべての波を反対にしないと、ダイオード効果を確かめることはできません。

新しい論文では、フォノンにもとづいて熱が伝わる熱ダイオードの場合も含め、電磁気学でよく知られているが音響学ではそれほど知られていない相反性の理論も引用して、「フォノンダイオード」とは何を意味するのかを議論しています。私たちは線形的な物質ではダイオードを作るのは無理であると結論し、この分野の解釈で気を付けないといけない点について議論しました。また、本当の意味での音響的なダイオードはまだ誰も作っていないことや、「フォノンダイオード」という言葉は本当は捨てないといけないことも書いています。

メガホンについては、相反性理論は何を言えるでしょうか?簡単に言えば、細い側の近くに耳をもっていけば、音をよく聞くことにも役立つということです。

「フォノンダイオードとは何か?!」

より詳しくは、議論については 'Reciprocity in reflection and transmission: what is a "phonon diode"?,' A. A. Maznev et al., Wave Motion, 2013 (in press)、三角形の実験については 'Real-time imaging of acoustic rectification,' S. Danworaphong et al., Appl. Phys. Lett. 99, 201910, 2011をご覧ください。

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