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神のごとく時間を反転させることは、音響波の進行を記録し逆の順番で再生することで、限定された形ではありますが可能となります。
時間反転音響学として知られるこの方法は、例えば医療超音波学や地球物理学の分野で、波を散乱する媒質の中でミリメートルやもっと大きなスケールで、よく作用します。
我々は今、先例のない空間分解能で時間反転音響学を成し遂げる方法を考案しました。この方法は、マイクロ構造を評価するのに有用です。
時間反転音響学の方法をマイクロスケールの小さな構造へ用いる際の問題点は、手ごろな方法で媒質中のたくさんの点でのギガヘルツにも及ぶ音響波をそれぞれ記録し再生することです。このことは、超高速光学技術を用いることで可能になります。
表面音響波を散乱させる小さな穴からなる試料上での波紋。この画像は、100 μm×100 μmの領域に該当します。
超高速レーザーパルスが試料の穴の列の部分の左側を波源としてたたき、表面音響波を発生させます。この画像はこのようにして試料上に生じた波紋を表しています。試料は、シリコンウェハー上に空けられた直系8 μmの16個の穴からなっています。
この発生した表面音響波は、まず穴の列の真ん中を通る縦線上に並ぶ各点でそれぞれ記録されます。この波はその後、計算により時間反転され再生されます。下の画像は時間−空間のグラフで、波が再び集まり焦点を結ぶことを示しています。
時間−空間のグラフ上に示された、復元された時間反転した波。
我々はまた波源の数と記録点の数を増やすことで、試料上の好きな点に波を集めることができることを示しました。この方法は再生するときに計算上のステップを含みますので、簡単に再生点の数を変えることができ、再び焦点を結んだときの焦点の大きさが今まで可能だったものよりも二桁も小さくなっていることを調べました。
この方法は、研究者が非破壊的にマイクロスケールのドットや接触点を評価することや、ギガヘルツ領域の導波路や、音響的に無秩序なマイクロキャビティ(空洞)、非等方性の結晶質での音響波の多重散乱を調査する際に手助けとなることでしょう。
(詳しくは、'Microscale multiple scattering of coherent surface acoustic wave packets probed with gigahertz time-reversal acoustics,' V. Tournat, D. M. Profunser, E. Muramoto, O. Matsuda, T. Takezaki, S. Sueoka and O. B. Wright, Phys. Rev. E, 74, 026604, 2006 をご覧ください。)