2つの結晶間の波紋

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一般の方向けの研究案内:パチャパチャ蛙、キーキーこうもり、トントンきつつき結晶の波紋を見るのページもご覧ください。

弾性波が2つの物質間を伝播するときに、光がガラスを通るときに進行方向を変えるように、反射や屈折がおこります。この効果は、2つの物質がたとえ同じ種類の結晶であっても、その結晶軸の方向が異なっているとおります。このことは理論的には予測されていましたが、私達は実験的に、銅のひとつの結晶粒から別の結晶粒に弾性表面波の波紋が伝わる様子を可視化しました。この実験で使った試料は多数の銅の結晶質がくっついてできており、それを研磨した面での弾性表面波の伝播を可視化しました。まず、表面の結晶粒の結晶軸の方向を、下の図のように電子線回折で観察しました。

the surface of a polycrystalline copper specimen

多結晶の銅の表面の電子回折像

この図は多結晶質の銅の表面です。色は電子線回折で測定した結晶配位を示しています。我々が弾性表面波の伝播の研究に使った2つの結晶粒はそれぞれAとBで示しています。

銅は弾性的な異方性が強く、弾性表面波は2つの結晶粒の界面を透過するとき、強く回折します。弾性表面波の光励起位置を結晶粒の境界の左側と右側にした場合の、200 μm×200 μmの領域での弾性表面波伝播のアニメーションを以下に示します。


銅の結晶粒を超えて伝播する弾性表面波の実験結果(上の2つの図)。クリックするとアニメーションが始まります(それぞれ360 kBの動画です)。結晶粒の境界の位置は下の白黒の光学顕微鏡像で確認してください。光励起の位置は赤の印で示しています。

私達の大学の田村研究室との共同研究により、この伝播の様子を解析しました。上で示した弾性表面波の伝播に対応する理論シミュレーションによる動画を示します。これには表面下の結晶粒の角度の影響も含まれいています。

理論シミュレーション。 クリックするとアニメーションが始まります(それぞれ340 kBの動画です)。

私達は表面下で何が起っているかについても理論的に調べました。理論シミュレーションにおける、試料表面に垂直に切った断面での弾性表面波の伝播の動画を示します。赤い点線は結晶粒の境界を示しています。

理論シミュレーション。 クリックするとアニメーションが始まります(それぞれ200 kBの動画です)。

私達は、この研究がさらに複雑な結晶粒の境界を明らかにできると期待しています。銅は立方昌系の構造をもつ金属です。2つの異なった結晶間での弾性波の伝播はどのようになるでしょう?

もっと詳しいことは、論文('Time-resolved surface acoustic wave propagation across a single grain boundary', D. H. Hurley, O. B. Wright, O. Matsuda, T. Suzuki, S. Tamura and Y. Sugawara, Phys. Rev. B 73, 125403 (2006))をご覧ください。

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